合成の誤謬―善聞語録121(広報3月号掲載)
「合成の誤謬」とは、何かの問題解決にあたり一人一人が正しいとされる行動をしても、全員が同じ行動をとると、想定とは逆に思わぬ悪い結果を招いてしまうことを指す経済用語である。代表的な例として使われるのが家計の貯蓄で、各家庭が消費を減らして貯蓄に回すと、経済全体が縮小し不景気になり貯蓄を取り崩さざるを得なくなるという。
なるほど世の中には、優秀な人を集めすぎるほど組織はダメになるとか、道路を造りすぎると渋滞が余計に激しくなるとか、安全性の高いシステムを導入するほど問題発生時に被害が大きくなるとか、暇な人に仕事を頼むとかえって時間が掛かるとか…確かに合成の誤謬を身近に実感することはある。野球場で一人だけ立ち上がればよく見えるが、全員立ってしまうと見えなくなるといった経験などお持ちであろう。要は物事を決める際には大局観が必要で、木を見て森を見ない状況への警鐘であり、鳥の如く世の中を俯瞰し、魚の如く時代の流れを読む”眼力”の大切さを説いている。
しかしながら森は一本、一本の木で合成された集合体であり、その木一本が枯れ朽ち果てるならば、やがて森が消滅する。”まち”も市民一人一人とその暮らし、生業の集合体である。蓋し行政は、”個の幸せ”に合成の誤謬を生じさせないような営みを”是”としてこそ、その存在意義が際立つのではないか。鳥、魚の眼に加え、地に足の着いた虫の眼が必要なのは言うまでもない。
山崎善也
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