星野君の二塁打―善聞語録101(広報7月号掲載)
『星野君の二塁打』という小学校の道徳で使われる教材が話題になっている。あらすじは、野球の試合で星野君に監督が出したサインはバントだったが、指示に反して強振し二塁打に。その一打がチームを勝利に導き選手権大会出場を決めた。しかし監督は試合後に選手を集めて星野君がバットを振ったことを咎(とが)める。「共同の精神や犠牲の精神の分からない人間は社会の役に立つことはできない」と語り、星野君の大会への出場禁止を告げる…。この教材については以前から専門家の間で問題視されていたが、最近のアメリカンフットボールの騒動以降、再び新たな議論に火が点いたらしい。
ところで、体育会系の学生の就職人気に以前と比べ翳(かげ)りが出てきたとのこと。体育会系といえば明るく元気で扱いやすいイメージがあり、かつては就職に苦労することはなかった存在。だが最近では逆に組織の変化や改革に対して保守的で、意見を求められても躊躇(ためら)いがあるという評価が翳りの要因という。社会の変化に伴い求められる人材が変わるのは理解できるものの、戦術に関する議論が道徳の根幹をなす倫理的な価値観にまで及ぶのもどうかと思う。
野球の定石を大前提にしつつも、星野君の判断に一定理解を示すくらいの監督の寛容さも一考されて良いのでは。そして何よりも当事者間に確たる信頼関係が涵養(かんよう)されていれば、違った顚末(てんまつ)になったのでは…と思ってみたりするのだが、さて皆さんは如何(いかが)お考えか。
山崎善也(綾部市長)
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