胡蝶の夢―善聞語録100(広報6月号掲載)
中国・戦国時代の思想家、荘子の書に「胡蝶(こちょう)の夢」の寓話(ぐうわ)がある。荘子が夢の中で蝶になると、自分が荘子であるとは気づかないが覚めるとやはり荘子であり、自分が荘子なのか蝶なのかわからない。夢が現(うつつ)か、現が夢か―現実と夢とが区別できないことの喩(たとえ)だが、人生の現実を夢と観じつつ、夢も現実も二つながらに肯定する深い哲理を含む。
最近の報道をみると、官僚が上司の思惑に忖度(そんたく)したとかしなかったとか、利害関係者に会ったとか会わなかったとか、廃棄した"はず"のメモや機密情報が実は残っていたとか、酩酊(めいてい)した挙句の不埒(ふらち)な言動を言ってないとか覚えていないとか…華麗な胡蝶とはおよそ縁遠い、さながら醜悪な蛾(が)が群れるが如(ごと)くである。しかしながら「真実」は一つであって、起こった理由や背景の解釈は異なることもあろうが、その前提となる誰が見ても変わらないはずの事実一つ一つはやはり明らかにされねばならない。
同じく中国上代に「綸言(りんげん)汗の如し」(皇帝の発言は、掻(か)いてしまった汗のように身体に戻すことができない)という格言があり、時の権力者の軽率な言葉やその安易な訂正を戒めたものである。さて我が身も加齢のせいか物忘れが年々酷(ひど)くなるにつれ、現から"胡蝶の夢"へのお誘いも多くなりがちだが、少なくともこの職にある限りは緊張感をもって現実の政(まつりごと)に注力するものと自戒している。
山崎善也(綾部市長)
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