"祭りの後"に…―善聞語録139(広報9月号掲載)
東京2020オリンピック・パラリンピックが終わった。2013年9月、国際オリンピック委員会のロゲ会長(当時)による「TOKYO!」の一声で、56年ぶり2度目の東京開催が決定してから足掛け9年。大会予算の大幅な膨張や度重なる不祥事が瑕疵をつけ、加えてコロナ・パンデミックで1年延期された上、開催の是非で世論を分けるなど紆余曲折を経た結果、前代未聞の無観客開催となった「スポーツの祭典」。祭りが幕を閉じると一般的には、熱狂的な興奮から醒めたちょっぴりセンチメンタルな心地になるものだが、今回はその異様な経緯を鑑みるに、手放しでそんな高揚感や感傷に浸る気分になれない。開催の意義や評価は後世に譲るとしても、”祭りの後”に果たして何が残されたのか、を少し冷静になって思案すると…。
まずはオリンピック58個、パラリンピック51個のメダル。色と数に拘らずともメダル獲得の過程では、期待通りに活躍した選手、期待に応えられなかった選手など悲喜交々と推察する。そしてそこに感動のドラマや悲話が生まれ、時にはナショナリズムが高揚する局面も確かにあった。一方でコロナ感染者が過去最多になるという記録も残した。オリパラ開催と感染状況の因果関係を明確に示すことは困難であろうが、大なり小なり、直接・間接の影響がゼロと言うわけにもいくまい。ワクチン接種をコロナ終息の切り札としていた政府の思惑と異なる状況となったことは間違いない。
更には、今回のオリパラ開催の財政的負担がどういう形で国民の債務として残っていくのであろうか。ハード整備費用に対し、無観客による歳入減、インバウンド収入の剥落、加えてコロナ対策費が嵩む。願うべくはこの負担を徒に次世代に先送りしないという、毅然とした財政運営である。時期を逃して手遅れになることを”後の祭り”と言うではないか。
山崎善也
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