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あしあと

    火中の栗―善聞語録115(広報9月号掲載)

    「火中の栗を拾う」とは、イソップ寓話に基づくフランスの諺で、猿にそそのかされた猫が囲炉裏の中の栗を拾って大火傷をする物語から、自分の利益にならないのに他人のために危険を冒す喩えとされる。転じて、自ら進んで困難に身を乗り出す意味でも使われ、戦国の武将山中鹿介が三日月に向かって「我に七難八苦を与え給え」と念じた話に通じる。勇将曰く「難事であればあるほど自らの器量が知れ、後の成長に繋がる」と。

    「迷った時は難しい方を選べ!」と成功者の多くは語る。それが自身成功のバネになったと。しかし逆説的には、成功譚に敗者の弁はない。確かに成功者には苦難を乗り越えた人が多いが、逆は必ずしも真ならず、苦労がすべて報われるとは限らず、また成功の陰には敗者があるものだ。強大なる仇敵を相手に主家再興を挑み続けた忠臣鹿介は、ついぞむなしく敗れ去った。

    強い心と運の持ち主ならば敢えて挑戦するも良しとしようが、一方で真の戦上手とは負ける戦はしないもの、との諭しもある。さて“凡人”ならどうする?詰まるところは、“時の流れ”を読みながら己の“心の声”に沿うしかないのか。焼けた栗は生グリよりも美味かろうが、その誘惑を前に冷静に己と場を顧みる姿勢が、一度きりの大切な人生を悔いなきものに導いてくれよう。それを慎重と見るか臆病と呼ぶか―。ただその人生は決して“凡庸”などと捨て置けないはずだ。

    山崎善也(綾部市長)

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