正常性のバイアス―善聞語録103(広報9月号掲載)
災害心理学で使われる用語に“正常性のバイアス”がある。バイアスとは「偏(かたよ)り」の意味で、即(すなわ)ち、人が自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりしてしまう特性を指す。西日本豪雨災害の教訓として、避難情報の発令にも拘(かか)わらず実際に避難した人の少なかったことが指摘されている。その要因として「災害など他のまちの事」とか「自分の家は大丈夫」といった、まさに“正常性のバイアス”がかかった根拠のない理由が並ぶ。
気持は分かる。誰もが我が家を離れたくなどないし、自分の布団で眠りたいと思うのは当然だ。各自がそれぞれその時と場に応じた安全基準を持ち、一定の経験に基づいた判断を行うことは、結果的に都合の良い理由となるかもしれない。
2005年に米国ルイジアナ州をハリケーン・カトリーナが襲った際は、避難対象人数より多くの人が避難し大パニックになった。この、避難することに対する日米の感度の差はあまりにも著しい。これは自分の命は自ら守れ!と幼少時から教え込まれる自立自衛の開拓精神に起因するとも評される。
互いに助け合うという我が国の美徳を否定するものでは決してないし、経験則に基づく判断を“正常性のバイアス”を持ち出して一方的に責めるつもりもない。が、それはそうとしても、時として現実はもっと厳しいことを、7月の豪雨災害は教えてくれた。
山崎善也(綾部市長)
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