不寛容社会に想う―善聞語録88(広報6月号掲載)
「除夜の鐘がうるさい」とのことで、寺が鐘つきを止めたり時間を深夜でなく昼間に変更した、という報道に接した。あるマンションでは「子どもに知らない人から挨拶(あいさつ)されたら逃げるように」と教えているから、ならば「挨拶禁止」をマンション内のルールにして明文化したとのこと。理屈は分からなくもない。が、本当にそれでいいのか、かえって大切なことを失っていないかと“昭和”の価値観を引きずる私などは、何かしら違和感を抱かざるを得ない。
「〇〇ファースト」を主張して世に出る政治家が目立つ昨今。選挙で己を支持してくれる人々の利益に意を介するのは理解できなくもない。私とて首長として本市の発展のために奔走している身なれど厭(いと)わずに問う―。だが果たしてそれだけで良いのか、と。高邁(こうまい)な理想を措(お)いて、一国至上主義やポピュリズムに走るばかりの為政者を“選良”と呼べるのか。正しいのは自分だけと都合よく思い込み、多様な価値観や意見に寛容になれない世の中を全(まっと)うと言えるのか―。
本市は戦後まもない昭和25年、世に先駆けて世界連邦都市を宣言した。食料事情も十分でない時代に目先のパンより世界の恒久平和を唱えたのである。前途多難な究極の理想とは知りながらも、「今日の夢を明日の現実に!」と敢(あ)えて謳(うた)い上げた先達の遺伝子に矜持(きょうじ)と希望の光を見出したい。
山崎善也(綾部市長)
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