人間国宝―善聞語録175(広報9月号掲載)
人間国宝とは、重要無形文化財の保持者として各個認定された人物を指す通称である。
その人間国宝に本市で育った陶芸家・神農巌さんがこの度認定の運びとなった。人間国宝の数は芸能・工芸技術合わせて100人余りで、その希少性と価値が分かるというものだが、もちろん本市の関係者では初めてのことで、まさに快挙。今までに日本工芸会長賞や紫綬褒章を受章するなどしてきた経歴から、いずれは…と期待はしていたが、吉報は思ったより早く届いた。
生まれは福知山市だが小学3年生の時に本市に移り住み、少年から青年の多感な時期をこの地で過ごした。私は綾部小学校、中学校、高校の同級生として付き合いがあった。長身に整った顔立ち、中学時代はバレーボール部のエースとして活躍したと記憶している。高校卒業後、大学を出ると心機一転、陶芸の道を志し、府立陶工職業訓練校にて基礎から学び、成型技術や青磁釉薬(ゆうやく)の研究に励んだという。特定の師につくことなく、独自の技法を苦労の末に極めてさまざまな賞を受けるなど確固たる境地を築いていくのだが、今は琵琶湖を望む地に窯を構えて創作に励む。水を想わせる清楚(せいそ)な色調で優美な造形に絶妙の起伏を施した作風が特徴の一つだ。
市長に就任した直後に、「自分の娘を嫁がせるようなものだ」と笑いながら寄贈してくれた逸品は市役所と中央公民館に飾ってあり、私の自慢の一つである。今も実家に帰省した折は市長室に寄って近況を語ってくれる。さすがに人間国宝に認定された後はマスコミ対応等に忙殺されたようだが、秋の個展に向けて新たな作品に挑んでいるようで創作意欲に衰えはない。先月、久しぶりに会食する機会を得たが、彼が選んだのはとある駅前の居酒屋。飾らない人柄は変わらず、枝豆と焼き鳥を肴(さかな)に乾杯した生ビールの美味さは忘れられない。
山崎善也
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綾部市市長公室秘書広報課広報・広聴担当
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