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あしあと

    痛点―善聞語録162(広報8月号掲載)

    最近、親しい人との何気ない会話の中で、魚には痛点がないということが話題になった。私にとっては文字通り「目から鱗」の驚きであったのだが、というのは魚が釣り上げられる時に針の刺さった顎に全体重がかかる姿を想像してしまい魚釣りを控えてきたからだ。魚も人間同様その痛みに耐えているならば、なんて残酷な仕業かと思い込んでいたためだが、はたしてその魚に痛点がないとしたら、話は別である。

    「痛みの無い世界」は総じて良いことの方が多かろう。実際、痛みを和らげるために痛み止めを飲む人は多く、薬剤メーカーもより効果の優れた鎮痛薬の開発を競っている。しかしながら人は痛みを経験することで、時には反省し、悔い改めようとするものだ。「失敗は成功の母」という所以である。失敗から多くを学び、その痛みを繰り返さないために精進するからであり、痛ければ痛いほどその効果は大きい。そう考えると痛みも時には、人生を見つめ直す機会として必要悪の一面があるのではないか、とも―。

    私は40代に痛風を発症し、それまでの不健全な食生活を改めた。結局は薬に頼ることになったが、その指標となる尿酸値にはできるだけアンテナを張った生活をしている(つもりだ)。ところが最近になって帯状疱疹を患った。主な原因は加齢との医者の診断で、これは諦めもつくが、加えて「ストレスと疲れ」と言われると、何とも微妙。対症療法とばかりに「ケ・セラ・セラ(どうにか、なる)」とストレス度合いを軽減するようなことをしたら、今の職責を全うできるであろうか、と複雑な気持ちに…。

    ところで気になることに、最近の研究では「魚にも痛点がある」との報告がある。まだ未確定で諸説あるとのことだが、叶わずともいっそ魚に直接訊いてみたい衝動に駆られるこの頃である。

    山崎善也

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