夏草や・・・―善聞語録91(広報9月号掲載)
裏庭の菜園に繁茂する夏草を見るに見かねて、盆休みに野良姿になってみた。「草むしり」とはよく言ったもので、草引きとも草刈りとも趣が異なる。生い茂る雑草を根っこからすべて引き抜くほどの根気もなく、かと言って地に蔓延(はびこ)る草を一気呵成に刈るのも覚束(おぼつか)ない。這いつくばってズリズリと抜いたり引きちぎったりすること一時間。汗だくで足腰はパンパンになったが何とか見かけは綺麗になった。
「雑草という名の草はない」とは昭和天皇の御言葉。一つ一つ名のある植物がそれぞれ懸命に生きようとしている様を、国民一人一人の姿に重ね想いを寄せられたものと解する。少し大げさに言えば、草むしりとは種の保存のために知恵を絞る植物との果てしなき闘いともいえよう。
が、そこに加勢してきたのが蚊の集団‼虫よけの備えを施してはいたものの、汗でスプレーが流れてしまった所や衣服の隙間を縫って、繰り返し襲いかかって来る。これも種の保存のためか、その執念には抗しきれず随分と献血に協力した。
共通して垣間見たのは、種の保存への拘(こだわ)りと必死な姿。翻(ひるがえ)って少子化社会を迎える我が国では「草食系男子」の増嵩が言われて久しい。人を雑草や蚊に準(なぞら)えて論ずることは憚(はばか)られるが、仮に少子化現象の起因に種の保存への危機感の欠如といった面があるならば、これも平和な時代の副産物と言えるのか…。蚊取り線香の煙漂(ただよ)う畑に佇(たたず)み、ふとそんな事を考えた。
山崎善也(綾部市長)
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