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あしあと

    DNAタトゥー―善聞語録180(広報2月号掲載)

    インターネット上に公開された個人情報が拡散されると完全に消すことが難しいことを、入れ墨(タトゥー)に喩(たと)えて「デジタルタトゥー」と呼び、将来にわたって不利益な情報が残り続ける場合がある。また個人のアカウントをSNSに公開すると、「知り合いかも」と過去に関わりのあった人の名前が自動的に紹介されてくる。懐かしく思い出す知己もいれば、あまり親しくない人の名前も含まれるが、このリストが自分に届くということは、相手側にも伝わっているのであろう。何やら恐ろしい感じがする。

    ところで私は18歳の春にこのまちを出た。特に消したい過去があった訳ではないが、誰も知らない場所で新しい暮らしをしてみたい、と博多で4年間を過ごした。就職してからも転勤が国内外と相次ぎ、そのたび見知らぬ土地での生活を経験することとなった。南米ボリビアの開発に携わったときは、南十字星を仰ぎ見ながら♪思えば遠くに来たもんだ〜♪と口ずさんだものだ。そんな自分が五十路に臨んで帰郷し今の職に就いている。

    どうしてUターンしたのかと尋ねられることがあるが、望郷の念だけでは説明がつかず、何か時限的なDNA発火装置とでも呼ぶような機能が体内に潜んでいたのかと真剣に考えてしまう。そういえば父親は、旧制中学を卒業したあと台北大学を目指すが受験に失敗、やはり九州の宮崎高等農林学校(現宮崎大学)を卒業して帰郷し、教師としてこのまちで生涯を終えた。実兄が戦死したという家族事情もあったらしいが、この父親の生き様に何やらDNAを見る思いだ。鮭の遡上(そじょう)や渡り鳥の習性など自然界に不可思議な事象は多いが、人間にも帰巣本能があるならばDNAに因(よ)ると考えると納得できたりもする。デジタルタトゥーは技術や法律で修正や規制が可能だというが、❝DNAタトゥー❞は神秘的なまでの普遍として繋(つな)いでいきたい。

    山崎善也


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