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あしあと

    トロッコ問題―善聞語録141(広報11月号掲載)

    軌道を走るトロッコのブレーキが壊れ制御不能になったと仮定する。乗っている5人を救うには進路を引き込み線に変えればよいが、そうするとその先にいる1人の作業員を轢いてしまうことにも…。さてトロッコの舵取りをどうすべきか?という「トロッコ問題」であるが、要は「多くの人を救うために少数の人を犠牲にしてもよいか」という問いかけになる。功利主義に基づくなら犠牲者の数を単純に比較して多い方を救う判断となるが、義務論に従うなら誰かを他の目的のために犠牲にすべきではないとの結論に―。倫理的、道徳的なジレンマをどのように解決するかを扱ったテーマで、NHK『ハーバード白熱教室』でもたびたび議論された。

    トロッコの仮説では現実味が湧かないかもしれないが、これをコロナ病棟の確保と一般診療のどちらを優先するかという選択肢に置き換えるとどうだろうか。この2年近く、コロナ対応に関するさまざまな課題が指摘されたが、限られた病院のベッドをいかに最適配分するか?との議論はトロッコ問題と通じる要素もあるのではないか。コロナ感染者が入院かなわず自宅療養を余儀なくされる一方、コロナ対応に追われて一般診療の手術が後回しになったケースもあるなど、医療関係者は“命の選択”を迫られる事態に直面した。

    大規模な事故や災害時には「トリアージ」が定着しており、症状の度合いが一目で分かるように4色のラベルで識別する。救える命を効率よく助けることが目的だが、見込みの薄い患者は結果として劣後に扱われるという憾みも否めない。はたまた人工知能(AI)による自動運転の実証実験が始まる中、衝突が避けられない状況も想定する必要があり、その際にAIはどのような判断基準を持つように設計されるべきなのか。答えは一様ではないにしても、トロッコの喩えは身近に起こり得る問題として議論しておく必要があろう。

    山崎善也

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