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あしあと

    ふるさと難民―善聞語録106(広報12月号掲載)

    ふるさと難民とは、「故郷はどこですか?」と問われて明確に答えられない人をいう言葉だが、そもそも“ふるさと”とは何であろうか。辞書的には「生まれ育った場所」であるが、心情的な意味合いでは「想い出のたくさん詰まった所」であり、まさに♪兎追いしかの山から♪のイメージだ。これに“難民”が付くと、都会の新興住宅地で育った世代や親の都合で引っ越しを繰り返した人を指す表現に使われるもので、何度も転校を余儀なくされた私の子らもふるさと難民といえようか。

    10年前に東京から帰郷する際、その意思を伝えた職場の同僚には二通りの反応があった。東京出身者の多くは「山崎には帰れる故郷があって羨(うらや)ましい」というもの。一方、地方出身者は「故郷に帰れる山崎が羨(うらや)ましい」(自分もそうしたいができない)。つまり誰からも羨望(せんぼう)されながら綾部の地を踏んだことを憶(おぼ)えている。

    その故郷で市長に就任して以来、中学3年生全員に直接語りかける「市長のふるさと講座」を継続している。その中では「皆には素晴らしい故郷があるが、誰にでもあるわけでない」そして「その故郷は絶対に皆を裏切ることはない」とのメッセージを発する。長い人生は山あり谷あり…時には騙(だま)されたり辛かったりすることもあるが、ふるさとの親や友達、先生や近所の人たちはきっと皆を温かく迎えてくれる…だからいつでも戻っておいで!と、声を大にして伝えている。

    山崎善也(綾部市長)

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