人は城、人は石垣、人は堀―善聞語録172(広報6月号掲載)
これは戦国時代の名将、武田信玄の言葉で、多くの武将が堅牢な城を築く中、「立派な城を築くよりも、人を大切にしよう」という教訓である。実際に信玄は大きな城を構えることなく、一重の堀だけの小さな館に居を据えた。強い武士を育て戦う集団を作ることの方が重要と考えたからであろう。松下電器産業(現パナソニック)創業者の❝経営の神様❞松下幸之助翁も「事業は人なり」という言葉を好んで使っている。
石垣はさまざまな大きさ、形の石を上手く組み合わせる必要があるが、事業も同様で戦略を描く頭脳集団はもとより、それを実行する者、日々の業務を愚直に行う者など縁の下の力持ちも必要。適材適所に人を配置してはじめて強い組織となる。第一線を退いたリーダーが、その後に大学で教鞭をとったり、〇〇塾と称して勉強会を開いたりして人材育成に励んでいる例は数多く仄聞する。なかには専門の学校を設立したり、冠の付いた講座を託したりする経営者も少なからず存在する。これもひとえにリーダーが❝人❞の重要性を認識しているからであろう。
ところで、住民への行政サービスを基本とする市役所業務も、大半は❝人❞で成り立っている。そして未曾有の人口減や少子高齢化が進展する今後、従来の業務に加えこれらの課題解決に立ち向かえる人材を必要としている。教科書的な知識だけでなく、この地域の特性や歴史を踏まえた上で「ふるさと愛」をもって❝綾部スタイル❞の政策を立案できる人材が求められているのである。職員数を増やすことも難しい状況では少数精鋭で臨まざるを得ない中で、本市は3年前から中堅職員を対象に「政策形成研修」を実施しており、ここで生まれたアイデアのいくつかは既に市政に反映させている。成功体験が挑戦への一番の動機づけになるとの思いからだ。さて、今年の成果物にも大いに期待したい。
山崎善也
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