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あしあと

    宥座の器 6勝4敗の交渉術―善聞語録42(広報8月号掲載)

    「宥座(ゆうざ)の器(き)」とは孔子の説で、空(から)の時は傾き、水を注いでいくと真っすぐに立つが、一杯に満たすとひっくり返ってしまう器を指す。何事にも中庸・ほどほどが肝要との戒めで、グンゼ創始者・波多野鶴吉翁の愛した言葉でもある。思い返せば、私の30年間の金融マン生活は交渉の連続の日々で、顧客とは融資条件等を、また人事や予算等は銀行内や監督官庁との調整を要した。ただしこれは私に限ったことではなく、世の中の生業(なりわい)の大半は交渉を経て決まっていくのが常であろう。

    私にとってその最たるものはM&A(企業の買収・合併)を担当した時期で、株式の価値評価、新たな社名や経営体制、そして事業所の再編等、全ての交渉条件で合意に達しなければならなかった。特定の企業の代理人として交渉する立場としては10勝0敗を目指しがちになるが、得てして全勝の後には苦い思いを余儀なくされる案件が少なからずある。経験から言えば、6勝4敗程度の交渉結果の方が買収後の事業は上手くいっている。というのは全敗した相手は屈辱に燃えてその交渉自体を潰しにかかったり、買収後も“和”が損なわれてさまざまなリスクが残ったりするからである。

    その意味では当方には6勝4敗で、交渉相手には5勝5敗の引き分けと受け止めてもらえるような交渉が理想とも言える。全てを足して二で割る必要はないが、要は相手の立場を思いやり、その退路まで断ってしまうことなく行う交渉こそ、真のプロが目指す境地であると学んだ。まさに宥座の器の教えそのものである。

    山崎善也(綾部市長)

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