❝グラウンドキャニオンに柵はない❞―善聞語録74(広報4月号掲載)
掲題は小沢一郎氏のベストセラー『日本改造計画』の前書きにある、規制の多い日本を皮肉った表現。米国コロラド州の大渓谷グランドキャニオンの絶壁に柵はないが、恋人たちは自己責任で大きな岩の先端で戯(たわむ)れる。日本なら「立入厳禁」の立札が並び、管理人が素っ飛んできて注意するであろうと揶揄(やゆ)する。それでも我が国では事故が起きれば公園管理者の責任が問われ、轟轟(ごうごう)たる非難が浴びせられよう。ならば自己責任と行政の管理責任の境界はどこにあるのであろうか-。
自助・自立を民主主義の是と解する米国では、救急車や消防車が駆け付けると料金を請求される州が多い。契約をしていないと火事が発生しても消防車が来ない場合もある。これは極端な話としても、行政サービスが極めて限定的に提供されている一例である。日々のゴミ収集にしても民間業者と地域の有償契約に基づいて運用されている場合もある。
米国のシステムを「よし」と言うのではない。行政サービスの限界をどこに置くかを改めて自問している。財源の制約はあるにしても、お金の有無だけの議論で済ませて良いのか-。答えは、政府の役割の大小の極の内にある❝米国以上~欧州未満❞に存すると思うが、そもそもグランドキャニオンに柵や立札は似合わないと感じながら、❝わがまち❞における❝境界❞を模索している。
山崎善也(綾部市長)
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