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更新日:2013年4月17日
卵の中の雛(ひな)鳥が殻を破ってまさに生まれ出ようとする時、卵の殻を内側から突(つつ)くことを「啐」といい、外から親鳥が殻を突くのを「啄」と言う。親が一瞬でも啄を見誤ると、雛の命は危なくなる。早くてもいけない、遅くてもいけない―誠に大事な瞬間であり「啐啄」はまさに同時でなくてはならない。
これは禅の世界において悟りを開こうとする弟子と、教示を与える師匠の間(ま)の取り方の大切さを説く喩(たと)えであるが、郷土出身の陶芸家も「啐啄同時」を座右の銘にして日々精進しているという。
何事にもタイミングというものがある。特に相手のある交渉事は、独りよがりでは空回りするだけだが、だからといって自分の意思で行動を起こさない限り何事も成就しない。自ら卵を割って出てきた雛は生き残れるが、他人に割られたら卵焼きになって食べられるだけだ―と、ユーモアたっぷりに解説してくれた企業家の話は印象的だ。自ら行動しないと物事は始まらないが、何事も己だけの力で為せるものではなく、謙虚に身を処する大切さとともに、何事にも絶妙のタイミングが肝要であると理解する。
目の前を泳ぐ魚が、垂れた竿の餌にいつも食いつくとは限らない。魚の腹具合までは知る由もないが、されど機を見計らって竿を振らねば釣れもしない。企業誘致を含め、トップセールスの成否にも「啐啄同時」は当てはまる―。
綾部市長山崎善也
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